みかの原わきて流るる泉川
いつみきとてか恋しかるらむ
中納言兼輔
いつ、あの人を見たのか。
いつ、あの人に会ったというのであろうか。
恋しい思いが湧き出て、泉川のように大きくなって行く。
みかの原から湧き出て流れるあの泉川のように。
まだ見ぬ恋。
あこがれのその人は、果たしてどんな彼、どんな彼女。
『小倉百人一首』野ばら社
百人一首と言いましたら、誰もが小学生の頃に触れたことでしょう。
もしかしたら、百人一首のカルタをやったことがあるかもしれませんね。
国語の授業では、暗記に挑戦したこともあったのではないでしょうか。
この歌は 新古今和歌集 におさめられている恋の歌です。
新古今和歌集とは、鎌倉時代初期に編纂されたものです。
奈良・平安・鎌倉・室町・・・。
遠い昔の歌集なのですが、今と変わらぬ恋心にキュンとしてしまいます。
では、中納言兼輔さん(877年〜933年)はどのようなお方だったのでしょうか?
三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)の一人で、和歌の名人だったそうです。
そして、紫式部の曽祖父です。
百人一首のこの歌に戻りましょう。
まだ会ったこともない人を思い、恋心を募らせる歌。
いつか出会える人を想像するだけで恋煩いしてしまうその情景を思い浮かべると、ロマンチックな気持ちになります。
どんなに世の中が進化して便利になり、あらゆるツールが発達しても
人を想うときめく心は変わらず、その感情には時間は関係しないのだなと思いました。
人を愛すること、人に愛されること、それを本心から望むのであれば
この和歌のように、素直な気持ちを表現することが大切だと改めて思い
恋する先人の姿に、私は今、クスッとしています。
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